新白河ローカルの現状
2018年の黒磯駅構内完全直流化に合わせて東北本線は新たに新白河駅で系統が分断されることになりました。これに伴い現在黒磯から新白河間では交直流電車が必要となり、勝田車両センターのE531系の耐寒仕様車である3000番台が運行を行なっています。
しかしE531系は最低編成が5両編成であり、日中を中心に輸送力がやや過剰な状態です。
今回は通称新白河ローカルの合理化について考えてみました。
まずは黒磯駅の役割と設備の歴史を簡単に紹介します。
黒磯駅の交直地上切り替え
黒磯駅は東北線の直流電化と交流電化の中間駅として昔から非常に重要な役割を持っています。
黒磯駅では2018年まで交直切り替えに駅設備での地上切り替えを採用しており、交直流電車を必要とせず直流電車と交流電車ともに黒磯駅に乗り入れられる特殊な形態となっていました。
貨物列車においても同様、交直流機を必要とせず直流機EF65から交流機ED75への貨車受け渡しが可能だったのも地上切り替えの特徴です。
地上切り替えでは必ず黒磯駅に停車しパンタグラフ降下、電源切り替え、パンタグラフ再上昇といった細かい動作が必要であり交直流特急の485系でも黒磯駅に長時間の停車が必要で、所要時間短縮のネックとなっていました。
そのため、1968年から下り1番線と、上り5番線は常磐線の取手駅付近同様デッドセクション(無電区間)が備わっており、交直流電車や交直流機による客車、貨車は車上切り替えによって黒磯駅を通過することが可能でした。
このように黒磯駅では地上切り替えと車上切り替えを組み合わせることによって、通過も可能・直流専用車の乗り入れも可能、交流専用車の乗り入れも可能という完璧の姿の駅であったといえます。
しかし、完璧とも言える黒磯駅ですが問題点も存在しました。
黒磯駅の問題点
黒磯駅最大の問題点はヒューマンエラーが発生する可能性がとても高かったことです。
交流電車が停車している架線に誤って直流の電気を流すと電車がショートし動けなくなってしまいます。
実際にこのような事例は発生しており2017年6月2日6番線に新白河方面の交流電車E721系が停車していたところ、駅員が操作を誤り直流の電気を流してしまい、E721系はショートし自走不能になってしまいました。
当該列車は運休し、他の電車への遅延も含めて約180人に影響しました。
また、車上切り替え装置、地上切り替え装置両方あることから保守管理にも他のデッドセクション以上にコストがかかっていたことだと思います。
2008年には残念ながら作業員が死亡するという事故も発生しており、保守管理や安全的な問題があった事実は否めません。
デッドセクション移設
保守管理が大変であり、ヒューマンエラー等のリスクが大きかったことから、2018年デッドセクションが新白河方面に移設され黒磯駅構内は完全直流化されました。
このため、従来の交流車の701系やE721系が黒磯駅に入線できなくなってしまい、黒磯駅から新白河駅の間に交直流電車または気動車が必要になりました。
交直流電車に関しては、常磐線で活躍しているE531系に耐寒仕様車である3000番台を開発し、水戸線の運用から小山ー黒磯間回送で送り込むことでE531系を3編成新白河ローカルで朝晩を中心に運用、さらに磐越東線の運用を整理しキハ110を2両編成2本を捻出しこちらは日中の閑散時間を中心に投入されました。
しかし、E531系は5両編成であるがゆえに、ワンマンで運用ができず人件費が嵩み5両編成では長すぎる。キハ110では、2扉かつ編成が短いことでラッシュ時や混雑時を中心に大混雑が発生するなど、最適とは言い難い車両運行が行われていました。
2020年10月の改正より、車両カメラを用いたE531系5両によるワンマン運行が開始。これによりキハ110は東北本線から撤退し、新白河ローカルは全列車E531系による運行に統一されました。
これにより、大混雑は解消されたものの、日中は閑散とした現状が続いています。また、E531系は現状小山から黒磯まではおよそ80km毎日1往復設定されており、採算性の問題もあります。
E531系はワンマンとなりましたが、依然として合理化できていない部分があり、次はEV-E801系の導入でどのようになるのか考えてみます。
EV-E801系の導入について考える
EV-E801系はJR九州の香椎線で運用されている交流型蓄電池車のBEC819系の設計を元にして、JR東日本が秋田の男鹿線で運用されています。
パンタグラフを備え、交流電化区間ではパンタグラフによって電気をとりいれ電車として運転、非電化区間では蓄電池の電気で運転します。
JR東日本では直流版のEV-E301系が烏山線で運転されています。
蓄電池車は蓄電池にある電気で動くため、当然のことながらバッテリー残量がなくなってしまうと動くことができません。
そのため、導入のための条件があります。
一般的には、蓄電池使用区間が比較的短区間かつ山岳区間など線形が厳しくないことが条件へとなります。
バッテリーが満タンの状態で、EV-E301系では50km、EV-E801系は90kmの航続距離があります。
では、EV-E801系を新白河ローカルに導入するのは適切なのか考えてみました。
まず、新白河から交流区間で1番南端である高久駅まではパンタグラフを上げて通常の電車として走行が可能であり、惰性走行中や回生ブレーキの使用で生じた電力も蓄電池の充電に回すことができるので、新白河駅での長時間の充電停車の時間を取る必要はありません。
デッドセクションと直流の駅である黒磯駅構内ではパンタグラフを下げバッテリーを使うことになります。
高久駅と黒磯駅の間は約4km、往復で8kmであり、黒磯駅で30分以上の停車時間があったとしてもEV-E801系のバッテリー性能では性能過剰となりうるほど、余裕です。
蓄電池の数を減らし、EV-E301系のバッテリー性能でも十分だといえます。
またEV-E801系の基本編成は2両編成であり、E531系での問題であった日中の輸送力過剰の問題をクリアできる他、朝夕のラッシュ時は増結をすることでE531やキハ110よりも需要に対して適切な車両のやりくりが可能となります。
車両は郡山に配置することによって、以前同様、新白河駅で系統分離せず黒磯←→郡山の一帯運用が可能となり、長距離移動者にとってプラスとなる他、E531系に存在する長距離の車両移動をなくすことができます。
E531系は勝田車両センター所属のため、万が一の故障時にすぐに対応できない可能性がありましたが、これの所属は郡山車両センターとなるため、万が一の対応もよりスピーディーにできるでしょう。
これらのメリットから見ても、EV-E801系での新白河ローカルの運用はかなり最適です。
現実的にはE531系が5両編成でもワンマン化され、また現状回送である小山から黒磯の送り込みも、E131系が宇都宮線に導入するのに合わせてワンマンの普通列車となるという予想がされています。
E531による運用が最適化されつつある現状、新白河ローカルへの蓄電池車の導入はE531系の置き換え時期になるまで現実にはならないと思います。
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